渦 ep.5

舌打ちすらできない。自分が今まで振りまいてきた無神経さがめぐりめぐって結局は自らを呪いはじめる。これはまったく因果応報だと思い、さめざめと反省する。冬の凍った太陽がはるか上空でぐるぐるとダイヤモンドの火の粉を散らす。

渦 ep.4

今日は太陽が 2 つ出ていた。そのことについて誰も何も言わないので私もそのことについては気付かないふりをして過ごした。片方の太陽は夜になっても沈まずにそのまま 2 つ目の月になった。寝る前にベランダに出て 2 つの月をぼんやり眺めていると体がなんだ…

渦 ep.3

駅に着くと電車が大幅に遅れているらしくホームが人で溢れかえっていてとても乗車できない。あきらめて 2 本ほど地獄絵図のような電車を見送ったあと、3 本目の電車にも乗りあぐねていると、すっと目の前を横切って入り口付近の押し合い圧し合いにタックルす…

渦 ep.2

喫茶店で知り合いの女の子と話していると彼女の肩越しに見覚えのある人影が見えた。なかなか思い出せずにいたが、アイスコーヒーにミルクを入れているときにふと思い出した。それはあのときの魔人だった。魔人は一人でシフォンケーキを食べていた。左手で新…

コーヒーにミルクを注ぐ。カップの中の小さな世界で漆黒と純白が琥珀の渦をゆるやかに描き出す。ミルクを注ぎ終えても渦は回り続ける。次第に渦は回転数を上げる。どういうわけか渦は止まらずにさらにスピードを上げる。そしてついにざばざばと波を立て始め…

blue a blue

雨上がりの道を駅に向かって歩いていると、住宅地の狭い道の真ん中にMサイズピザくらいの大きさの水溜りがあって、水面がゆっくりと渦を巻くようにして揺らめいている。水溜りの傍にしゃがんで水面を覗き込んでみると渦は急に回転のスピードを上げ始める。び…