月面

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#4

4 月。第 4 ボタンが取れかかったまま冬を乗り切ってくれたコートをちゃんと直しておこう。

取り壊されてまっさらになった母の実家跡地は月に似ていた。超古代文明が滅び去った月面で新月の真っ暗な月面で春の風が吹く月面で海辺の近くの月面で、静かに宇宙船を待つようにふんわりと昇華する時間の澱をぼんやりと見送った。

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触媒

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#1

旧暦換算ということなら節分が過ぎようやく厄年が終わったことになる。いろんなことが一度に重なったり体調崩すなどもあり厄年恐るべしとしか言えない一年であった。まだ後厄なので気は抜けない。しかし神田明神で厄払いをしたという同年の友人は何事もなく過ごしたらしい。みなさん厄払いはするべし。

#2

新たな年の開運には新たな習慣、新たな触媒が必要であろうと思いあれこれ考えた結果、腕時計を買ったのである。19 歳のとき以来 20 年以上ぶりに身に着けるわけだが思いの外違和感はなくなんなら結構気に入っている。

ちなみに 19 歳で一度腕時計をやめているのは、大学受験の試験当日に腕時計を忘れて時間がわからないまま受験せざるを得ず焦ったものの割とどうにかなった、むしろ集中力が高まりめっちゃ早く解き終わって余裕で 3 回くらい見直せたりしてかえってよかった、という経験を経てこれはなくてもいいものなのかもしれないと捨てたのであった。まだ携帯電話が普及していない時代になかなか思い切ったことをしたものだが実際その後そんなに困ることもなかった。

太陽と地球が回転するから朝が来て夜が来るらしい。ということは時間とは太陽と地球の回転のことだ。今この左手で宇宙がぐるぐる回転しているのだ。そして長針と短針が奇跡の角度で交差するとき私は大いなる宇宙の波動とシンクロし、おやつの時間を知るのだ。おやつはどら焼きなのだ。

#3

東京は大雪で真っ白へ沈没。僕の足音も君の舌打ちも一夜に埋もれてどこにもないねもうどこにも。

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#43

母が亡くなったので喪に服すような気持ちで更新を止めていたけれども年末だしなんか書く。

自分にとって母という存在は少し感情の置き所が難しい。3 歳のときに父と母は離婚した。父方の子として引き取られて次第に母とは疎遠になった。その後詳しいことはよくわからないのだが、父が失踪した。数年間消息不明だったらしい。その間は祖父母に育てられた。まったく狂った話だが、つまり我々家族 3 人は一度完全にバラバラになった。父は戻ってきたが母とは完全に離れることになっていく。だから母の記憶は幼少期のおぼろげなものしかない。

一度だけ中学生の時に会っているのだが、その後 30 年近く別の時間軸と空間軸の中で生きてきた。どこでどうしているかも全く知らなかったが奇しくも母の死を知らせる連絡を受けたことによってその時空の隔たりが突然消滅した。ようやく元の道につながったが待ち合わせ場所に立っているのは自分だけだった。父が亡くなったのはもう 20 年前だが、父も母も死に目には会えなかった。我々家族 3 人はやはりバラバラに死んでいくのだった。

伝え聞く限り両親は二人とも自由を求めて生きた人だったようだし、見事に勝手気ままに生きて死んだ。自分にもその血が流れている自覚がある。自分もそれなりの年月を生きてきたので、自由を求めればある種の業を背負うことになると知っている。受け継いでいくべきものがあるとしたらそのどうしようもない不合理の血か。ならばすべて絡めとってあんたらよりも俺が一番自由に生きてやるから見ておけ。

手元に残る数少ない写真の母は息子が言うのもどうかと思うがとても美しい人であった。どうぞ安らかに。

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達人

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#42

足のトレーニングがんばったら一週間筋肉痛を引きずる羽目になった。ピストルスクワットってやつができるようになりたいんだけど、筋力だけじゃなく柔軟性も不足してて当分できなさそう。将来、ああいうゴツい自重トレーニングを黙々とこなすジジイになって近所のガキどもから達人と呼ばれるのが夢なのだが。

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なんとか

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#41

想定外なことがあってめずらしくしんどい。まあでもなんとかなるか。こういうときいい加減な性格でよかった~と思う。

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とても夏

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#40

ずっと何日も、龍の腹みたいな重たい雲が絶え間なくうねり続けている。夏らしく気まぐれな土砂降りにあう。絶望的な豪雨をぼんやり眺めて雨宿りしている時間はなんというかとても夏だと思う。雨のにおいが充満した街で次の季節のにおいを探す。

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虹、それ

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#38

台風一過、大きな虹が出る。

「写狂老人 A」行ってきた。「八百屋のおじさん」ていう古いスクラップ作品がすごくよかった。アラーキー、若いころは正直苦手だったのだが、歳を重ねるにつれてあの強烈な生々しさを受け入れられるようになってきたし、トライアンドエラーをそれも人生だよなって感じで作品に落とし込んでいくようなところが好きになってきた。

ところでオペラシティーアートギャラリーって常設展が毎回よくて特に最後のところにヤバい作家を置いてくるので結構好き。

#39

カフェで注文するとき店員さんが怪訝な顔をしているので何だ?と思ってたのだが、そのあとしばらくして左肩のところにおそらくカラスのしわざと思われるフン的なそれがべっとり付いてるのにようやく気づいたのであった。つらい。

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