賽の目

#1

未明に出現したホログラムは壊れたルービックキューブのように賽の目に砕け散り走査線の裏側へ吸い込まれて本日の速報は終了、いつまでも塗りつぶし足りない蛇の目のようだ、終わらない金魚すくいのようだ、物語は海岸線色に青く書き換えて、地下深く巡って夏が終わって君がすくい上げた淡く鈍い光の粒はベランダからそっとばら撒いて。

知らない

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#16

高く俯瞰で見ることも深く思考することもそれなりにできはするのだけど、それをつなげることがうまくできていない。終点の駅がいつの間にか変わっていて知らない街にたどり着く。だいたいいつもそうだ。若い頃ならそれはそれでありだったけど。

雲間

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#15

低空飛行する輸送船が雲間から出現する。僕たちは一所懸命に手を振る。輸送船のライトが点滅する。次の瞬間、輸送船から小包が投下される。僕たちはその落下地点に向かって一斉に走り出す。輸送船はまた雲間に消えていく。

時計

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#14

電池切れで止まった小さな時計をポケットに入れて歩く夜、流れ星がすべて砕け散って、僕たちの願い事は何一つ叶わないのだとしても、静かに物語を始めるしかないのだし。

パセリ

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#13

子供の頃からパセリが好きなのだが、パセリ好きな子供というのはなかなかの希少種なので周りの大人に珍しがられていたのだけれども、小学生の頃一緒に暮らしていた祖父が、お前そんなに好きなら自分で栽培したらいいじゃねえか、と言って早速翌日パセリの種を買ってきてほらやれと与えられ、庭でパセリとあとミニトマトか何かを栽培して自分で収穫して食べていたのであった。なんかふと思い出した記憶なのだが、今思うとパセリ好きとかいうよくわからない属性であっても子供に新しい体験をさせるきっかけとして捉えていた祖父はやはりおもしろい人であったなと思う。