2021-01-01から1年間の記事一覧

#18 青い天気雨、冷たい波紋、泥水みたいなファシリテーション、落下するオレンジ、海へ続く道。

石を

#17 だそうです。

知らない

#16 高く俯瞰で見ることも深く思考することもそれなりにできはするのだけど、それをつなげることがうまくできていない。終点の駅がいつの間にか変わっていて知らない街にたどり着く。だいたいいつもそうだ。若い頃ならそれはそれでありだったけど。

雲間

#15 低空飛行する輸送船が雲間から出現する。僕たちは一所懸命に手を振る。輸送船のライトが点滅する。次の瞬間、輸送船から小包が投下される。僕たちはその落下地点に向かって一斉に走り出す。輸送船はまた雲間に消えていく。

時計

#14 電池切れで止まった小さな時計をポケットに入れて歩く夜、流れ星がすべて砕け散って、僕たちの願い事は何一つ叶わないのだとしても、静かに物語を始めるしかないのだし。

パセリ

#13 子供の頃からパセリが好きなのだが、パセリ好きな子供というのはなかなかの希少種なので周りの大人に珍しがられていたのだけれども、小学生の頃一緒に暮らしていた祖父が、お前そんなに好きなら自分で栽培したらいいじゃねえか、と言って早速翌日パセリ…

#12 花吹雪の中でただ息を止めていた。シャボン玉の中を泳ぐネオンテトラを遠目に見ていた。花びらがまとわりつくから逃げだそう。こわれた船を直してあの銀河に帰ろう。

写真

#11 花粉に体を乗っ取られた花ゾンビなので花の写真ばかり撮ってしまう。

平日

#10 このところ週末になると露骨に体調が悪くなる。平日はアドレナリンとカフェインでごまかしてしまっているのかもしれない。そうだった、サラリーマンってこういう感じだったわ。そうそうこの感じこの感じ。

飛行機

#9 寝すぎたせいか気圧のせいか花粉症のせいか、目が覚めると頭が痛むのでコーヒーで鎮める。冬と春がページをめくりかねるように行ったり来たりしている。横殴りのシーントランジションの中間地点で、低空飛行する飛行機を眺めながらカフェインが効いてくる…

#8 ベランダで待っていると大きな白い鳥がやってきて手すりにとまる。おい、約束の期日だ、と鳥が言う。ビー玉のような眼が赤青緑紫と揺らめきながら色を変える様子に魅入ってぼんやりしてしまう。おい、と鳥がこちらを覗き込むようにぐっと顔を近づけてきた…

#7 薄暗い地下室で手にしたスプーンに青い月面都市が映りこむ。春風のせいで砂時計の嵐が止まらない。花はただ咲くだけ。この時空がどんなに歪んでも。

#6 冬の終わりの劇場に二月色の花が咲く。風に揺れてゆっくりとスクリーンに滲んでいく。生活に流されていつのまにか意味を失ってしまっても、またこうやって思い出せばいいだけ。

電車

#5 電車で遠い街へ行く。こぐま座がよく見えるという街へ行く。プラットホームから冬が過ぎ去ろうとしている。

曇り

#4 手のひらでくるくると回って消える言葉。変わることも変わらないことも難しい。選択肢は無限にあるから目をつぶって選ぶしかない。それを運命とか宿命とかいうのは馬鹿みたいだと思う。冬の日の曇り空はナチュラルなモノクロできれいなセメントみたい。

小屋

#3 ドアをノックする回数を間違えて月の裏側にある真っ黒な花が一面に咲く広場に出てしまう。ここに来たら次の新月まで帰れない。しまったと思うがどうしようもないので広場の真ん中にある小屋に向かう。小屋には同じように間違えて来てしまった年配の先客が…

結晶

#2 マフラーの隙間を縫って冷たい風に絡まった 0.5 秒の結晶がすり抜けていく。雪が降るとか降らないとかいって結局降らなかった日、立ち止まってぱりぱり砕ける風の音に耳を澄ませていたらうっかり影を凍らせてしまった。

白昼

#1 冬晴れの静かな青空、透明な白昼の三角形、七曜の螺旋にがんじがらめ。泥だらけの手でかき分け転がり込んで、無限に広がる円天をあんぐりと見上げて、ようやく呼吸を思い出す。