小屋

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#3

ドアをノックする回数を間違えて月の裏側にある真っ黒な花が一面に咲く広場に出てしまう。ここに来たら次の新月まで帰れない。しまったと思うがどうしようもないので広場の真ん中にある小屋に向かう。小屋には同じように間違えて来てしまった年配の先客が一人いて落ち着いた様子で紅茶を飲んでいる。彼は木星から来たという。見たことのないかたちの素敵な帽子をかぶっている。木星にもあの橙色のドアがあるのかと思う。しばらくぼんやりと窓の外を眺めていると不意に風が強くなって黒い花がざわざわとなびく音が聞こえてくる。来ましたね、と言って我々は灯りを消し息を潜める。