トリツカレ男 / いしいしんじ

トリツカレ男 (新潮文庫)

トリツカレ男 (新潮文庫)

文庫版が出たので連休中に読んだ。個人的には「麦ふみクーツェ」の方が好きだけど、短いのでさらっと読めるからいしいしんじ作品がなんとなく気になってる人にはおすすめかもしれない。順番としては、先に文庫版が出てる「麦ふみクーツェ」よりも前に書かれた作品でビリケン出版*1から出たものらしい。

この人の作品の特徴だと思うのだけど、登場人物がコミカルに描かれるのでかわいくて楽しい作品なのかと思わせておいて、実はきりきりと切実。主題はものすごくシンプルでストレートで心の真ん中を素直に貫いてくる。ひたすらイノセントでロマンチック。これだけストレートに描きながら重さよりはやさしさが残るのはこの人ならではなんだろうなあと思う。途中、主人公ジュゼッペのあまりの切実さにうわぁ…って、自分はそこまで自分自身を犠牲にできるだろうか…って、考えさせられた。

*1:ビリケン商会:http://www.billiken-shokai.co.jp/
ここのギャラリー、好き。