風の歌を聴け

村上春樹が好きだ、と言うと、ふーんそうなんだー、という顔をされる。なんだよー、いいじゃんかよー。
村上春樹の作品に初めて触れたのは大学入試のときだった。一浪して受けた第一志望の大学の国語の問題で「風の歌を聴け」の一節が問題文として出題されたのだ。
思えば高校時代はほとんど本を読まなかった(そのくせどういうわけか国語が得意科目だったのだからよくわからない)(国語が苦手な友人へのアドバイスとして本を読め、とか言っていたのだからやっぱりよくわからない)。読書を趣味の一つとして捉えるようになるのは大学に入ってからで、そのきっかけとなったのがこの「風の歌を聴け」なのだ。まあ、その大学には落ちたわけだけれども。
とりあえず大学 1 年のときは村上作品を片っ端から読み漁った。そこから派生してフィッツジェラルドカポーティなんかへ飛び火していき、それ以外のものも積極的に読むようになった。
これはある意味、自分にとっての原点のひとつなのである。なので、なんとなく壁にぶち当たったり思い悩んだりして自分を見失いそうになってるようなときには、この「風の歌を聴け」を読んだりする。大学時代、同じ時期に村上春樹を読んでいた友人はこの作品のことを「20 回読んでも何が言いたいのか分からない」と言っていた。うん、俺もそう思うよ。ていうかそういうわりに 20 回も読んだのかよ。でも、自分にとってこれは確実に自分の居場所に立ち戻らせてくれる、とても大事な存在なのだ。内容よりもむしろその本にリンクしている記憶や感情を求めているのだろうな。