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まるい

それはなかなかまるい。それはちょっとまぶしい。それはたぶんあまい。それはもしかしたらあたたかい。

それはどこにでもいる。夜の闇の中で動く影はそれだし、すれ違いざまに目に入る淡い色の何もかもがそれだし、通路の向こうから聞こえてくる足音のパターンはきっとそれだし、ぼんやり聞き流していた会話の中に突然現れたのはたしかにそれだった。

あるいは神はない、とパスカルせんせいはいいました。

風が冷たい。息が白い。指先が痛い。コーヒーが熱い。雲が早い。星が見えない。犬がかわいい。月が赤い。あいつがうるさい。飴が丸い。まばたきが多い。苺が食べたい。声が低い。星占いが嫌い。前髪が鬱陶しい。雪が降らない。才能が欲しい。海が遠い。エン…

ドア

電車のドアが開く。足元に気配を感じる。見ると、電車とホームの隙間に誰かがいて、下からこちらを見上げている。目が合うと、彼はこちらに手を伸ばしてチロルチョコを一つ、そっと差し出してくる。私は、残念だけど、という感じで首を横に振る。彼は少しだ…

ブルー

ついに我々は降り立つ。雪の降り積もる月面にアディダスのソールが着地する。リアルムーンウォークでふわふわとクレーターの丘を駆け上がる。ついに我々は辿り着く。ガガーリンという人は言いました。地球はブルー、ベリーブルー。

アスファルトに立ち尽くし、私はただの日時計だった。手にしたアイスクリームはもう溶けてしまった。一つのシーンが終わる。あなたは舌打ちをする。