信号待ちで立っている場所がちょうどマンホールの上だった。すると、

1. マンホールのふたがいきなりすとーんと下に落ちる。そのまま地底世界まで落ちる。地底人はよそ者の私を快く受け入れてくれる。私は地底人として余生を過ごす。

2. マンホールのふたがいきなりぽーんと跳ね上がる。そのまま上空高くどこまでも上昇していく。大気圏を越え、私は星になる。オリオン座の真ん中の3つ並んでいる星の4つ目が、私だ。

3. マンホールのふたがいきなりぐるぐる回転し始める。目が回る。回転する西新宿の夜はきらきらと美しい。

4. マンホールのふたがいきなり「やあ、マンホールくんだよ!」と話しかけてくる。私たちは友人になる。しかしいつか別れのときがやってくることに気付いてしまう。信号が青に変わっても、友達だよ。

5. マンホールのふただと思っていたそれは実は巨大なオレオであった。通りすがりのOLに「あの人オレオに乗ってる〜」とくすくす笑われる。

6. マンホールのふただと思っていたそれは実は釈迦の手のひらであった。私は金斗雲に乗って逃げ出すが結局もとの場所に戻ってしまう。そして金斗雲だと思っていたそれは実は巨大なオレオであった。オレオはいきなりぐるぐる回転し始める。目が回り、上空高くどこまでも上昇し、涅槃の果てで星になりかけたときマンホールくんが私を呼ぶ声が聞こえ信号が青に変わる。