西瓜糖の日々 / リチャード・ブローティガン

まだ読んでなかったので読んだ。有名な作品なので今さら私がごちゃごちゃ言う必要もないと思いますが、まあ一応。
ブローティガンの世界は一見ファンタジーで御伽噺のようだけれども、実は全体的に逃れようのない死の匂いに覆われている。この作品も西瓜糖、iDEATH、忘れられた世界、虎の時代、といったキーワードがファンタジックな雰囲気を演出しているのだが、主人公の両親が虎に殺される回想のあたりから(恐ろしく淡々と語られるのだがそれが逆にショッキングである)死というものの存在とそれに対する言いようのない違和感が強烈に表出しはじめる。そして次第にストーリーは不穏な空気に包まれていき、クライマックスへと続く血塗られた道を転がり始める。
この作品は訳がとにかく素晴らしい。もともとブローティガンの文章は詩的な要素がかなり含まれていると思うのだが、翻訳する上での細かい言い回しの表現の仕方にものすごくこだわりを感じる。